入札・
委託制度

国や自治体が公共サービスを調達(実施)する時、公務員が直接の担い手とならない場合は、原則として競争入札により調達先や業務委託先を選定することが地方自治法で定められています。競争入札ですから価格競争が前提となるわけですが、過度な競争で、実際に従事する労働者の賃金や安全衛生、福利厚生が必要以上に削られる実態が多く見られます。労働に対する適正な対価の確保、すなわち公正労働基準について入札・委託制度の中で実現することを目指しています。

→「社会的価値の実現を目指す自治体契約制度の提言」
−政策入札で地域を変える−


死亡災害を容認する民間委託の実態

劣悪な委託労働者の環境
▲西畠顧問弁護士を講師に学習会

 本年1月18日午前11時ごろ、子安三丁目の幅5メートル、勾配約3%の坂道で、ビン・缶の資源回収を受託している業者の作業員が、収集用のコンテナボックスを設置中に、止めてあったはずの作業車が動き出し、車と電柱にはさまれ死亡した。目撃者が無く、現場の状況からの想定である。一人作業だから、災害の実態も、原因もわからないまま時が過ぎようとしている。
 この災害について、公共事業をになう労働者の命が失われたと言う事実を、市はもっと深刻に受け止めるべきであり、安全衛生を担当する者は、法的関係を論じる前に、労働者の命にかかわる危険な要因がどこにあるのか、強い問題意識をもつべきである。もちろん、こうした労働災害を放置する労働組合は、その名に値しない組合であることは言うまでもない。

発注者側の契約上の限界

 さて、担い手の身分がどうあれ、その作業の安全が確保されなければならないことは当然である。しかし、業務の指揮命令権と使用者の安全配慮義務の関係は、市職顧問の西畠弁護士によると直営、委託、派遣の場合で下図のとおりとなる。
 このことから、今回の死亡災害について、業務の発注者である八王子市当局は、当該の委託業者及び関連業者に安全運転と安全作業の遵守を要請し、委託仕様書の見直しを含めた検討を実施することとなった。また缶、ビン等の選別作業場等の定期パトロールも実施することとなった。
 これらをまとめると、発注者側の取り組みは、(1)受託業者への指導要請、(2)現場パトロールの実施、(3)委託契約、仕様書に安全対策を明記する。…となる。当局側の見解は、「委託契約の中で、出来ることはした」ということになる。(しかしこれとても組合側が安全衛生委員会などをつうじて10年来問題提起してきた結果の話である)

社会的矛盾は解決していない

 「委託先の問題だから関係ない」というのが「普通の自治体当局の姿勢」だから、八王子市の対応は「それよりはまし」ということになる。しかし、同じ目的と内容の公共サービスでありながら、公務員か民間労働者かで命にかかわる安全衛生問題に著しい格差が生まれ、その責任を取らなくても済まされる現行制度の根本的な問題は変わらない。もちろんこれは安全衛生だけでなく、賃金や労働時間などにも言えることである。社会的な問題は解決していない。

入札・委託契約制度の問題

 ところで、こうした問題を生み出す背景には、地方自治法が規定する自治体の入札・委託契約制度がある。競争入札を基本原則とし、出来るだけ安価な公共サービスを得ることが、税の有効活用につながると言う論理である。その結果、入札に残るためのコストダウンに、労働者の賃金や安全衛生が削られるのは容易に想像がつく。冒頭の資源回収業者が、一人作業で従事していたのも人件費の削減の為であり、言い換えれば価格競争が死亡災害の呼び水になっているようなものである。
 ところで、自治体の業務委託など公契約を結ぶ際の国際労働基準として、ILO94号条約は「自治体が公共事業を委託する場合、委託先企業の労働条件(賃金、労働時間、安全衛生など)も契約条項に入れる」と規定している。現在、先進国はほとんど批准しているが、日本は、経営団体の反対と政府の方針が一貫して反対の立場を取り未批准である。小泉政府が「民間で出来ることは民間でやる」としているが、だとするならば、国際労働基準となっているILO94号条約をただちに批准すべきだ。

求められる自治体の主体的な取り組み

 さて、現行の入札・委託契約に問題があるとするならば、逆に委託契約制度を通じてこうした問題を解決できないか。さらに、公共事業の委託契約を通じてよりよい街づくりが出来ないか、…などの問題意識をもちながら、昨年自治労に「自治体入札・委託契約制度研究会」が設置され、八王子市職も参加している。(研究会中間報告、希望者は組合まで)
 自治省も99年2月地方自治法を改正し、総合評価方式を導入した。これは競争入札の際、価格以外の要素も考慮しうると言うものである。この価格以外の要素として安全衛生の基準を考慮させられないか、さらには環境対策や男女平等、障害者雇用など社会的な取り組みを積極的に進めている企業に高い入札評価をあたえ、結果として街づくりの推進に寄与させることが出来るのではないか。…と言う考え方である。
 これを八王子市が採用すれば、現行地方自治法のもとで、総合評価方式に基づく入札基準と委託契約仕様書の整備により、少なくとも委託先労働者の安全衛生は前進するはずである。同時に、すべての委託契約につうじる安全衛生基準を入札基準に位置付けるよう、あるいは街づくりに向けた環境や男女平等、障害者雇用などもあわせて総合評価方式とする一般基準を条例化するよう今後働きかけていきたい。

執行委員長
安全衛生対策会議議長
職員安全衛生委員会
副委員長

藤岡一昭

 

委託先の安全衛生に関するアンケートにご協力ください
 6月13日に開催した安全衛生学習会で提起した委託先労働者の安全衛生問題について、
実態調査のためのアンケートにご協力ください。

(機関紙「はちおうじ」386号/2001.7.18)

 

  
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